14人が本棚に入れています
本棚に追加
数日後、有築家にて。
「はい、出来たよ。」
菜緒がコリンに私服の着方を教える。
特にネクタイあたりがなかなか慣れず、何度も繰り返して覚える必要がある。
コリンの服は戦闘服に近く、人前には出せないのだ。
「ありがとうございます。
本当なら、服ぐらい自分で着られるけど。」
女の子に服を直してもらうのは家庭教師以外にいなかったのでちょっと嬉しかった。
ちなみに学校の制服は学ランに学帽である。
「これぐらい平気だよ。
コリンって、何でも一人でやるタイプ?」
「まぁ、これぐらい出来ないと困るでしょう。」
実際、大抵のことは一人でやってきたのだ。
「僕は一人でしたから。」
つい、口が軽くなる。
「コリンって何やってたの?」
多少そっけないコリンが気になって聞いてしまう。
「剣士ですよ…魔物や人間の討伐。
エンフォートは戦争の絶えない世界です…僕みたいな戦える人間は貴重なんですよ。」
ドカリ、と乱暴に腰を下ろす。
「貴重って…。」
コリンは人を…考えたくない。
だが、ついコリンは菜緒に昔話をしてしまう。
「そもそも、ロプセンベルクは軍事国家ですからね。
戦うこと以外に国と民を生かす方法が無い。
資源もリンゴぐらいですし、黙っていたら飢え死にしちゃいますから。
こちらの世界と同盟が組めたら万々歳かもしれませんね。
兵士とリンゴぐらいしか出せるものはありませんが。」
そんな中で一人で異世界に来たのか。
かなり切羽つまっている。
最初のコメントを投稿しよう!