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おまけに英雄伝承の濃いロプセンベルクには移民希望者が絶えない。
しかし、土地柄彼らを食べさせるだけの資源はなく…移民を突っ返したら突っ返したでいらん噂を流され、外交問題に発展する。
売れないリンゴをばらまくか人を殺すか…生きるためには必死かもしれない。
最悪、身売りをしてどこかの国と共和国の条約を結びたいが良い条件は結べないだろう。
条件が悪いと奴隷の扱いになるのだからおいそれと手を結べない。
菜緒は外交なんか分からないが胸に痛みを感じた。
「戦争を仕掛けるのにはお金もかかりますが…戦場に兵士として差し出せば口減らしも出来ますからね。
英雄伝承の賜物ですよ。」
何の動揺もせず、言い放つ。
こんな子供の口から人道に背く言葉がポンポン出るあたり…本当に違った世界の人間だと思い知らされた。
理解しなきゃならない…同じ人間だと理解してあげたい。
そう菜緒は思っていても、心が…心が納得出来ない。
「人殺し!」
パシィン!
殴る気なんかなかった…殴りたくもなかった。
実際、同じ立場に立たされて菜緒がコリンと違う考えをするとは思えない。
いや、大抵の人間はそうではなかろうか。
無責任な正義感で他人を責めるのが人道と信じているのなら菜緒はそんな人間も嫌いだ。
彼女は…本当に人を幸せにしたかったから。
菜緒は後悔に胸が潰されそうになった…新しい友達が出来て嬉しかったのに。
だが、コリンは謝るでも責めるでもなく言葉を返した。
「あなたは面白いですね。」
コリンは少し苦笑いしているように見えた。
「面白い?」
からかわれていると思ったが少しだけ違う。
「あなたは他人の立場に立って物事を計れる人間なんですよ…たとえ、僕みたいな人間の立場でもね。」
誉められているのか…ちょっとだけ気分が軽くなった。
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