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「…まぁ、それはそれで。」
コリン、吐き捨てるように話を切ろうとする。
彼は、平穏が好きなのだ…このあたりは普通の人間と変わらない。
「そんなの、寂しいよ。」
孤独に生きる人間に免疫がないだけかもしれないが、菜緒は本気でコリンを心配した。
「僕個人としては、寂しいと感じることすらそうそうないんですよ。
祭り上げられたとはいえ、仮にも国王権力にすら手が届く身分じやないですか。
僕はね、変えようと思えば変えられることがたくさんある…十分恵まれているはずだ。」
コリンは不幸を嘆く人間ではない。
自らが剣を持っていることを、自覚しているのだ。
ただ、自ら剣を振るう理由が無いだけ。
自ら剣を振って歩むほどのものを、世界に見いだしてはいないのだ。
「…。」
価値観の絶対的相違に、菜緒は押し黙ってしまう。
コリンは仲間が欲しかったわけじゃない。
だが、菜緒が与えられるのは彼の仲間であるということだけだ。
彼の気持ちすら、背負ってやれない。
虚しい気持ちが溢れる。
「とはいえ、変えようと考えて動いて…それに従う人間なんかそうそういません。
誰かのためであろうが、反発する人はするんですから。」
人間とは、自らの意思で動く生き物。
だからこそ、自分の足で歩くことを願う。
「でも、話し合えば…。」
一般論しか出なかった。
「たぶん、話が通じる人たちじゃないと思うよ?
刃物とか、持ち歩くし…刃で語るのが礼儀だと信じているし。」
物騒なことを無表情で話すこの少年。
「刃物って…。」
あまりにも馴染みのない、異世界の常識に困惑する菜緒。
見ていなければ、分からないかもしれないが。
「まぁ、大抵は脅せば逃げるけど。
人間、生命は惜しいから。」
「それが普通でしょ?」
少しだけ、共感出来ることを見つけて気持ちが楽になる。
しかし、コリンだけはあくまでも冷めていた。
「それなら良いんだけど。」
いろいろ、見てきたんだろうな。
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