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「君の名前は?」
子供は口を動かし、自分の名前を名乗る。
「…あそこに居るのはオジサンの大切な人なんだ」
子供の腕を引っ張り、傍に寄らせる。
子供は死ぬ様に寝ている人の手を触る。
「冷たいね」
「そうなんだ。
オジサンは悲しいんだ………だから………」
男は口をパクパクさせる。
何を言ってるの?
分かんないよ…………………………………………。
「…………」
またか。
机の木の独特の匂いが鼻腔を刺激する。
机から頬を離し、ペリッと音を発てる。
俺には幼少期の記憶が無い。
いや、正確には覚えてないだけ。
小学校の入学式はギリギリ覚えている。
友達に話をしても、大体忘れるだろ。とか、気にするな。と笑いながら返事が返って来る。
一回は納得して忘れる。
だが、再び思い出し、再び悩み始める。
別に大したことはしていない。
脳が思い出せと言わんばかりに、俺を悩ませる。
ウンザリだ。
学校では他愛の無い話をして、授業を受け、授業中に寝て先生に怒られる。
それの繰り返し。
その最中にも、記憶を思い出す為に脳が活動する。
睡眠中が一番楽だ。
ホームルームが終わり、掃除をして帰路に着く。
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