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誰だ?
ドタバタと荒々しく走る音が徐々に近付いて来る。
少年は顔を覗かせて、近付く人を確認する。
「笠尾さん!」
声を上げると笠尾は少年に気付き、笑顔で手を振った。
「おお!良かったお前だったのか!」
滑り込むようにエレベーターに入り、少年はボタンを離す。
「どうしたんですか?
そんなに急いで…」
「ハァ、ハァ、ハァ……え?」
息を切らし、肩で呼吸する笠尾は下を向き、聞き直す。
「何で、急いでいたんですか?」
「ハァ…ハァ…エレベーター、待つの嫌いなんだよ俺。
だから、走って来たんだよ…」
壁に凭れると、額の汗を拭い、
「お前は何でここに?」
と少年に訊いた。
少年は、
「稽古場に行ってました」
と答えた。
「じゃあ、同じだな」
「同じって、笠尾さんも?」
「ああ、俺は違う場所でな」
笠尾は口を大きく開け、欠伸をかく。
少年はエレベーターの階表示をジッと見詰めた。
考えている事は一緒なんだな…。
ジッと何かしていられない。
少しでも、レベルアップしないと!
少年は紫式部の柄を握り締める。
エレベーターはゆっくりと止まり、扉が開く。
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