真々田組

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その紙には、綺麗な字で短くこう書いてあった。 「"醍醐寺"…」 綿貫が言葉を洩らし、お茶の入ったコップに手を伸ばす。 「寺か?」 戸次が笠尾に訊くと、笠尾は頷く。 「京都にある寺だ」 「何で、寺なんかに行くんだよ」 「社長さんに訊いたら、ここを進められた。 ……俺は、もっと強くならないといけない。 だから醍醐寺に行くんだ。 …今回の件で身に沁みた。 アイツばかり、苦しい思いを背負う事は無い。 その為に、俺は強くなりたい」 自分の目の前に片手を出し、グッと握り締める。 「……皆、各々理由があって、ここに居るのは分かってる。 けどよ、ここまで来たからには引き返せない。 進む、前へ進む!」 真剣な眼差しで目に物を言わし、戸次と綿貫を見る。 三人の間に張り詰めた雰囲気が流れ、暫くして二人は満更でもない表情を見せ、戸次が口を切った。 「そんな事、分かってるよ。 俺達だって、お前と同じ事を考えてたよ」 「戸次…」 「そうそう。 私こう見えて、乗っかった船は降りない主義なのよ」 「綿貫…」 笠尾は口元を緩め、フッと笑った。 考えてる事は一緒、って訳か。 笠尾はニヤッと笑い、 「よし! 飯食い終わったら、三人で社長さん所に行くぞ!」 と言い、止めた手を進め始めた。 戸次と綿貫も止めた手を進め始め、真々田の下へ急いだ。
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