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振り返った俺はあきれ気味のソラさんを目にした。 その先で室内でしゃがみ込む家主の姿があった。 家主「仕方ねぇじゃんっ! わかんねぇんだもんっ、……猫の扱い方なんか。」 ……へっ? ムスッとする家主は反省しながらも文句たらたらだ。 ソラ「動物大好きなのに報われないね、いっつも!」 ふにゃっと笑いながらソラさんは窓際に座り、クシャッと家主の頭を撫でた。 家主「なっ!? 撫でんなっ!!!」 バシッとソラさんの手を振り払う家主は顔を赤めていた。 そんな家主にソラさんは楽しげに笑っていた。 家主「なんか今日のソラさん、ソラさんらしくなくねぇ?」 ソラ「ミナの言い方真似た。」 家主「やっぱりな。」 俺が餌を食べたかなんて些細なことだろう。 そんな些細なことでも頼める間柄なのだ、このふたりは。 ……あれ? そうなると、この人いつも見てるってことになるよね? 俺がちゃんと餌を食べたかどうかを。 しかも、カーテンの隙間から毎日わざわざ。 白「うわぁ……っ。」 ふたりの耳に俺の声が届いたらしく、視線が俺に注がれた。 ソラ「逃げない猫がいるなんて珍しいや。 ねぇ、白猫いるよ?」 家主「…なん…で…?」 この人はただ本当にわからないだけのようだ。 言葉が少しばかり優しくなくて、どうしたらいいかわからないから表情が強張って。 俺たちからしたら、それが睨んでるになってしまうのだ。 本当は違うのに。 きっとこの人は猫が、動物が大好きなんだ。 接し方がかなり下手で、ものすごく不器用なだけ。 逃げなかったというよりは逃げ損ねたのだが、そんな俺に家主は嬉しそうに笑っている。 それがきっと総てだ。  
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