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……あれ? あの猫、どこ行ったんだろう? 走るだけ走った俺の頭は冷静さを取り戻していた。 よくよく考えてみれば、俺はあの猫のことをよく知らないのだ。 あの猫も俺と同じ野良だ。 どこかに寝床はあるかもしれないが、基本的には居場所なんてない。 自由気ままな生活だ。 それが野良ってやつだから。 どうしよう。 探そうにも探せないなぁ。 諦めるなんて選択肢は俺にはなかった。 茶猫が逃げていった時に見せた家主の表情が頭にあるからだ。 どうしてこんなにも探しているのか理由はわからなかった。 きっと罪悪感から来ているのだと思っていた。 家主の手を引っ掻いてしまったあの罪悪感だ。 ごめん。 そういつか言いたい。 家主のあれは優しさだと今は知っているから。 でも、俺には言えない。 ごめんなんて言葉は。 家主の耳にはそう届かないから。 それなのに思う。 叶わないと知っているのに。 言いたい、と。 そしたら伝わる気がするから。 嫌いじゃないよって。 嫌いじゃないから、……シキ? そう思う俺の頭の中で家主は笑ってくれていた…… To be continue...
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