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*シキ*
尊敬。
それが始まりだった。
いつしかそれが恋になり、俺の想いは通じた。
俺の好きに、あの人の好きが来る幸せを感じた。
それが幻想だと知らされた時には遅かった。
俺はあの人を心底愛してしまっていたから……
シキ「もう来ねぇのかなぁ。」
カーテンの隙間からそっと庭を見ていた。
かれこれ1時間。
来ないと思いながらも、来るかもしれないと淡い期待を抱いて動けずにいた。
1週間と少し前だ。
俺はとある猫と出逢った。
泣きたくて、誰かに傍にいてほしくて仕方なかったあの雨の日。
忘れもしない。
彼の口から総てを告げられた日だから。
雨に打たれる為に出たそこに、見慣れない1匹の猫がヘナヘナと座り込んでいた。
……猫?
きたねぇなぁ。
白猫「…にゃぁ…。」
小さな小さな声で鳴く、白い毛を汚した猫。
なんだかその姿はまるでその時の俺みたいだった。
動物に好かれないのはいつものことだ。
だから、引っ掻かれるのなんて慣れっこだ。
ちょっと、いや、相当悲しいが。
その日から餌を用意していて、俺を嫌いだとしても白は食べに来てくれる。
それが2日前から来なくなったのだ。
シキ「もうこんな時間かよ!
行かねぇとやべぇなぁ。」
時計の針の進み具合に、仕方なく俺はそこを離れることにした。
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