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*白猫*
ソラ「あっ、おかえり。」
振り返ると、ソラさんが庭へと歩いてきていた。
その姿に茶々は走っていった。
茶「ソラさんだぁ☆」
甘えた声を出し、茶々はソラさんの足にすり寄っていた。
ソラ「……かわいい。」
しゃがんで撫でだすソラさんに茶々は嬉しそうに笑顔を見せていた。
シキ「なぁ、何でソラさんにはそんなに懐いてんだよ?」
玄関から出てきた家主はムスッとした表情でソラさんと茶々を見ていた。
シキ「ずりぃ……っ!」
足にすり寄ってきてもらいたいのかな?
……俺でもいいかなぁ?
悩めてる俺を無視し、ふたりは話していた。
ソラ「あっ、……自己紹介した?」
シキ「はっ?」
ソラ「オイラ、ちゃんとしたよ?」
シキ「コイツら猫だぞ?
猫なんかにしても、わかるわけねぇよ。」
ひっ、ひどくない?
俺たち人間じゃないけど、わかるのに……っ。
茶「にゃーっ!!!」
落ち込む俺をよそに、茶々は家主の手をシャッと引っ掻いてしまった。
勢いよく飛んで。
シキ「いってぇ……っ!」
キッと家主は茶々を睨みつけた。
茶々はサッとソラさんの背中に隠れた。
茶「僕、わかるからね!
猫をなめんなーっ!」
にゃーにゃー鳴く茶々に、家主は引っかかれた手を逆側の手で押さえていた。
シキ「んだよ……っ。
行くぞ、ソラさん!」
フンッと家主はし、スタスタ家から出て行ってしまった。
ソラ「ゴメンね?
シキ、ひねくれ者だから。
今更自己紹介するなんて言えないんだ。
ゴメンも言えないなんて、素直じゃないよね?」
素直じゃないし、ひねくれ者?
面倒くさい人なんだな、家主って。
ソラ「でもね、長年付き合うとわかってくるよ?
本当はわかりやすくて、かわいい人だよ?」
可愛い……?
家主が?
茶「ねぇ、あの人ってかわいい?」
俺は首を傾げた。
出会って間もない俺には見えない家主の姿が、ソラさん、そしてきっとミナさんには見えているのだ。
シキ「ソラさんっ!」
ソラ「今行く!
……またね?」
駆けていくソラさんを俺たちは見送った。
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