105人が本棚に入れています
本棚に追加
*白猫*
ふたりの後を懸命に追いかけてきたが、見失ってしまった。
茶「あれれ~?
確かこっちに来たよね???
もう、どこ行っちゃったの!??」
白「知らないよ、はぁ、はぁ。」
ゼエゼエしている俺に茶々は仕方なくといった感じだろうが、休憩を選んでくれた。
電柱と壁の隙間に2匹して座り込んだ。
「あんた、シキのとこに居ませんでした?」
疲れ果ててた俺は気が付けなかった。
影が出来ていたことに。
バッと茶々は俺を置いて逃げ出してしまった。
遅れながらも茶々を追いかけながら振り返れば、口にした言葉の意味が分かった。
ミナ「んふふ。
この近くのノラでしたか。」
笑いながら裏口から中へと消えていったのを俺は目線から消した。
茶「ねぇ、ねぇ!
知ってる人?」
白「茶々、面識ないっけ?
家主の友達。
確か……ミナさんっていったかな。」
茶「ねぇ、そしたら近くにいるんじゃない!?」
歩きながら、かもしれないと思った矢先だった。
女の子たちの騒ぐ声がしたのは。
「今日も素敵だったねぇ!」
「ねぇ~♪
やっぱり王子の笑顔は癒やされるわ!」
「私は隣のふにゃっとした笑顔がいい!」
「私は奥にいる人がいい!」
「5人とも格好良過ぎなんだも~ん♪」
隣を歩く俺たちに気が付かずに、女の子たちはきゃーきゃー言いながら歩いていった。
甘い、甘い香りをさせて。
茶「ねぇ、……甘い香りがしたね。
家主からする香りじゃない!?」
白「そうだね。
あの子たちの中にいるってことかな?」
だが、その考えはすぐに消えた。
また同じ香りをまとった女の子たちが来たからだ。
途切れることなく、何組もの女の子たちが同じ方向から来る。
会話は最初と差ほど変わらず、5人の男の人の話だった。
白「みんな同じ袋持ってるね。
もしかしたらその中身から香るのかもしれないね、この甘い香りは。」
茶「あっ!
あそこ、女の子がいっぱいだよ!」
そう言って駆け出す茶々。
俺も駆け出した。
甘さが強まっていくのを感じながら、複雑な気持ちを抱えていた。
あの中にいるかもしれないのだ。
家主が愛する人が。
最初のコメントを投稿しよう!