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撫でられていた茶猫は目を細め、気持ちよさそうにしていた。
なんだか久しぶりだなぁ。
こんなにのんびりするの。
テラスは日当たり良好だ。
ポカポカと気持ちがよく、俺の瞼は重くなっていく。
ソラさんと茶猫の姿はついに俺の視界から消えてしまった。
ソラ「……あ。
二匹とも寝ちゃったや。
かわいいなぁ。」
そんな声を耳にしながら……
ソラ「……あっ。
おかえり~」
ソラさんの声が遠くで聞こえた。
だが、まだこのフワフワする夢の世界に居たかった。
俺は目覚めることを拒んだが、耳に届いた声に瞼は上がった。
「ただいま。
ソラさん、悪かったな。
変なこと頼んで。」
聞いたのはあの時だけとはいえ、忘れることはない。
バチッと目を開ければ、やはり家主が少し離れた位置にいた。
ビクッと身体をしたものの、家主は俺に気が付いていなかった。
どっ、どうしよう……っ!
ソラ「ううん。」
ふにゃっと笑うソラさんへと、家主は近付いてくる。
にっ、逃げないと!
それは咄嗟的だった。
理由もなく、ただそう思ったのである。
家主「何で茶色がいんだよ!
俺が頼んだのは白……えっ?」
バレないようにゆっくりと立ち上がった俺を、家主はついに視界に入れてしまった。
目を見開く家主はあの時と違って見えた。
一瞬固まってしまった俺は足を踏み出せなかった。
そんな一瞬に、家主が動いた。
ソラ「……シキ?」
それは一瞬だった。
家主は俺より先に駆け出し、靴を脱ぎ捨ててテラスから中に入ったのだ。
まるで俺から逃げるように。
白「……っ。」
サッといつものようにカーテンが閉められてしまった。
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