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  嫌われてる……? それもそうだよな。 何もしてないのに引っ掻いたんだからね。 当然、かぁ。 胸がキュウっと締め付けられた。 行こう……っ。 走る必要はもうない。 俺は背を向けて歩きだした。 ソラ「どうしたの?」 家主「俺……っ、そいつに嫌われてんの。」 ……えっ? 振り返ると、ソラさんは立ち上がっていた。 ソラさんの膝で寝ていた茶猫は落とされていた。 茶「いったぁ…っ! あれれ? ねぇ、どうしたの?」 茶猫は身体を起こし、うーんと背伸びをした。 ソラ「忘れてたや。 茶色、ごめんね?」 ソラさんはしゃがみ、茶猫の頭を撫でた。 茶猫が大丈夫と鳴いた。 家主「どうかしたのかよ?」 家主の声に茶猫は耳をピンと立てた。 茶「誰、誰!? もしかして……帰ってきたの?」 コクンと頷くと、茶猫は身体を起こした。 かと思えば、家主が閉めたカーテンを口に咥えた。 そして走りだし、勢いよくシャッとカーテンを開けてしまった。 なっ、何してるんだよっ!? ギョッとする俺の視界にポカンと立つ家主が写った。 家主「…んだよ?」 茶「にゃ~♪」 甘えた声を出す茶猫。 家主に取り入る気だ。 俺は突然のことにただ見ていた。  
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