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「文香…おいで」
俺は腕を広げて、文香を呼ぶ。
すると、手を伸ばして、甘えるように、文香が抱き着いてきた。
甘え下手の文香が、素直に甘えてくるのは珍しい。
映画に感化されたかな?
「クスクス…どした?うさぎちゃん」
文香は無言で俺の胸の中でスリスリとオデコを擦り付けた。
「ふーみか?」
「…なんだか…映画のラストシーンが羨ましくて」
映画のラストシーンは、主人公の二人が、日だまりの下、公園のベンチで仲睦まじく過ごす姿。
「何?俺にひざ枕してくれるの?」
「そういうことじゃなくて!
ずっと、あんな風に穏やかに寄り添っていけたらなぁって」
「…そうだね」
ずっと、穏やかに…とは俺も心底思うけど、どうしてこうも、俺達には邪魔者が立ちはだかるのか。
俺達は相思相愛なんだから、邪魔すんなっていうんだ。
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