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「あの…言いたくないのなら…」
俺の微妙な表情の変化に気付いたのか、文香が慌てて手を横に振り、そう言った。
ちょっと、暗くなりそうな話なんだけど…
余計に気にするといけないし、文香には話してみようかな…
「あのさ…」
「はい」
少し俯き加減で話し出した俺に、文香は優しい声で相槌を打った。
その声に何となく背中を押されたように話し出す。
「実は…
たまたま家族写真を撮った当日に、両親が死んだんだ。
当時、小5だったから、反抗期とまではいかなくても、親と一緒に写真なんて照れくさくって…
だから、俺だけしかめっ面で、家族写真を撮ってさ。
その後、両親が出掛けて、事故に遭ったんだ。
だから、未だに、その最後の家族写真を見れなくて…
それから、写真撮るのも躊躇うっていうか…」
最後のほうは情けない程、小さな声になってしまった。
「…ごめんなさい。あたし、何も知らなくて、無神経なこと…」
「文香は何にも悪くないんだから、謝らないで。
だって、今、俺が話したんだから、知らなくて当然だよ」
俺は今にも泣き出しそうな文香の頭を撫でながら、努めて明るく言った。
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