19385人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの…こんなこと言ったら、また無神経なことかもしれないんですけど…」
「ん?何?」
文香は、ちょっと躊躇いつつも話し出す。
「あたしは…逆なんです」
「逆?」
「はい。あたし…本当の父との写真がなくって…だから、写真に飢えてるっていうか…」
「一枚も!?」
「はぁ…
お母さんが全部棄てちゃって…
自分自身の写真も少なくって…」
文香が淋しそうに笑う。
亡くなった父親似だからと、母親に疎まれて育ってきた文香。
きっと、母親が敢えて文香の写真を撮ってくれなかったんだろう。
「だから、写真って、その時の幸せな場面を切り取って残してるような気がして、人の写真とか羨ましかったんですけど…
将さんのお話聞いたら、そうとも限らないかなぁって。
やっぱり…人生いろいろですね」
人生いろいろ……確かに。
以前、文香とそれぞれの身の上話をした時にも『人生いろいろ』と話した。
写真一つでも、こんなふうに、人生への影響がそれぞれ違う。
だけど…
・
最初のコメントを投稿しよう!