甘い一週間

35/45
前へ
/227ページ
次へ
「幸せを切り取って残す…か。 そんなふうに考えたことがなかったな…」 「あ!いや!写真が少ない、あたしの妬みのこじつけというか…」 「そんなことないよ。 今、文香の話を聞いて、俺、ちょっと考えが変わったよ」 「え?」 俺達が惹かれあったのは、きっと、持て余した孤独感に共鳴したところがあるからだ。 肉親に恵まれなかった俺達。 ぽっかり空いた自分の帰るべき居場所を探し求めて、お互いを見つけたんだ。 だから… 「俺の写真嫌いは、俺がただ意気地がなかっただけ。写真が不幸の前触れみたいに感じて… だけど、両親が亡くなったからって、写真を撮ることと、起こるかどうかも解らない不幸は、全然別問題なのに…馬鹿だな…俺。フフッ」 「将さん…」 なんだか、突然すっきりした。 文香のお陰で、発想の転換。 『写真は幸せを切り取るアイテム』 そう考えれば、怖くない。 俺には文香がいる。 幸も不幸も、文香と共にあるのだから、もう怖がる必要もない。 文香の言葉が、いともたやすく俺のトラウマを解消する。 文香の存在が、俺をまた新たな発見へと導いていく。 やっぱり彼女は特別だ。 ・
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19385人が本棚に入れています
本棚に追加