甘い青春と旅立ち【Ⅰ】

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実は、文香が今、いろいろと就職試験を受けている企業の下調べをしたのは俺だ。 文香は凄く恐縮していたが、俺としては、業績や経営方針が怪しい会社などに就職して、文香がいらぬ苦労に苛まれるのが嫌だったからだ。 それに、俺は叔父貴のツテで、その手の情報が入りやすかったし。 だから、文香は俺がピックアップした企業を受けている。 「将さんが選んだとこって、恐れ多い大企業もあるから、気後れしちゃうなぁ…」 なんて言いながらも、律儀に俺のオススメ企業の試験を受けに行く文香が、なんとも可愛い。 しかし、文香は、学校から薦められ申し込んだ、ある文具デザインコンテストで入賞したくらい、実力は備わっているのだ。 だから、3社ほど最終面接まで行き、うち1社は内定を貰えた。 そして、そろそろ俺の一番オススメの企業からの結果が出るはず。 そこは、創業者が北南大出身で、密かに『北南枠』という北南大と北南短大学生贔屓の採用枠があると囁かれている。 実際、俺の先輩や知り合いも数人働いている。 後々のことを考えると、なんとか、ここに受かって欲しい。 ・
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