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「将さーん!!」
普段履き慣れないヒールの踵を鳴らし、文香が今にもこけそうな足取りで、手を振り、駆けてくる。
「文香!転ぶよ!ゆっくり!」
「うおッ!…とっと!」
俺が注意した矢先、転びそうになり、慌てて受け止める。
「危ない危ない!助かったー!」
「だから、言ったのに」
文香は俺に咎められ、ヘヘッと愛想笑いをした。
うん。やっぱり、いつ見ても文香は可愛い。
「あれ?今日もスーツって、面接あったっけ?」
「あ!はい!最後に受けた会社の二次面接が…」
「あ~…あそこ行ったんだ。
でも、あそこ、余り乗り気じゃなかったじゃん?
もう内定貰った所があるから、無理しなくても…」
「いやいや。このご時世、内定取り消しもあるから、念のために」
「…なるほど」
一時期よりはそういうことは無くなったが、やはりまだまだ現実は厳しいからね。
「…でもぉ……」
「でも?」
文香が上目遣いで悪戯っ子のように笑う。
何だろ?
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