甘い青春と旅立ち【Ⅰ】

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「将さーん!!」 普段履き慣れないヒールの踵を鳴らし、文香が今にもこけそうな足取りで、手を振り、駆けてくる。 「文香!転ぶよ!ゆっくり!」 「うおッ!…とっと!」 俺が注意した矢先、転びそうになり、慌てて受け止める。 「危ない危ない!助かったー!」 「だから、言ったのに」 文香は俺に咎められ、ヘヘッと愛想笑いをした。 うん。やっぱり、いつ見ても文香は可愛い。 「あれ?今日もスーツって、面接あったっけ?」 「あ!はい!最後に受けた会社の二次面接が…」 「あ~…あそこ行ったんだ。 でも、あそこ、余り乗り気じゃなかったじゃん? もう内定貰った所があるから、無理しなくても…」 「いやいや。このご時世、内定取り消しもあるから、念のために」 「…なるほど」 一時期よりはそういうことは無くなったが、やはりまだまだ現実は厳しいからね。 「…でもぉ……」 「でも?」 文香が上目遣いで悪戯っ子のように笑う。 何だろ? ・
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