甘い香り【Ⅰ】

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だけど、うさぎの絆創膏を見ながら、彼女はぼんやりしている。 「だから…うさぎちゃん。 いつになったら、名前教えてくれるの?」 「え、えと…えと…あの…、え~」 「ぶッ!だから、『え』は聞き飽きたから…クックック」 アタフタと真っ赤な顔で、『え』しか言葉が出て来ない彼女の様子が、凄く愛らしくて面白い。 「あー!いつの間に崎村さん、そこに座っていたんですか~?」 わざとらしく、橋本が話に割り込んで来た。 お前…さっき、目が合っただろ… 「崎村さん、この子、今日が初参加なんですよー。だから、緊張しちゃってて~」 「そーみたいだね~。俺、この子から『え』しか聞いてないよ」 「あははは!文香、なーにやってんの~!」 コイツ…俺達のやり取りを、わざと楽しんでるやがるな 橋本と俺は、嫌味な笑顔で笑い合った。 ・
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