甘い香り【Ⅰ】

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すると、意を決したのか、彼女は唇をキュッと噛み締めた。 「えっと、北南デザイン短大のプロダクトデザイン専攻の三田文香(ミタフミカ)です! 同じ専攻の橋本千夏さんに誘われて、今日から参加させて頂きました。どうぞよろしくお願いします」 彼女は早口で自己紹介をしてペコッとお辞儀をし、恥ずかしいのか、すぐに座った。 三田フミカ…かぁ どんな漢字なのか彼女に尋ねると、『文香』だと教えてくれた。 ほんわかした彼女の雰囲気に、なんとなく合っている気がした。 その後も、俺は彼女と話していると、彼女のコロコロ変わる表情や仕草に、何故か強く惹かれる。 「かわいいなァ、文香は…」 心の中の呟きが、つい声に出た。 あ…やべ…… 「あ、あの…さ、さ、ささ、崎村さん?」 俺より彼女のほうが焦っていて、俺はまた笑ってしまう。 ・
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