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時は瞬く間に過ぎ去り、とうとう三月。そして、今日、卒業式。
学祭ではいろいろとあったが、今思えば、あれが学生としての最期のバカ騒ぎだった。
祭の後は、皆、卒論や卒制に追われるという厳しい現実だった。
単位ギリギリだった智紀と橋本は、俺や文香よりも更に苦しみ足掻いて、なんとか留年せずに済んだようだ。
そして、めでたく卒業式を迎え、4月からは社会人として、それぞれの生活が待っている。
「あの…崎村君……出来たら、メルアドとか教えて…」
「あー…そういうの無理だから」
「崎村くーん!
写真を一緒に撮って~!」
「写真嫌いだから…」
「崎村さん…好きです」
「俺、彼女いるから…」
今日は朝から、女達からやたらと声をかけられる。
ま、覚悟してたけど。
正直に言うと、俺にとって、バレンタインの次に面倒くさいのが卒業式だ。
このタイミングで告ろうと考える奴がどれだけ多いのか、身を持って実感する。
人生で4度目、最後の卒業式だが、毎度こんな状態でイラつくばかりで、感無量になるなんて程遠い。
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