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そして、俺は部室のドアを開け、文香を導き入れて、俺も中へ入る。
誰にも邪魔をされたくないので、念のため、こっそり鍵をかけた。
そう…学生最後の二人の空間を邪魔されたくない。
この部室は、俺達にとって一番思い出深いから…
ここは…
文香と二度目に会った場所
俺が文香への想いを自覚した場所
文香と初めてキスした場所
文香が過去の傷を乗り越えた場所
「フフッ…初めてここに来た時のこと思い出すな…」
文香が、あの時、俺が座っていた場所へと行き、愛おしそうに優しく机をなぞる。
「うん…そだね」
「場所がわからなくて、遅刻して焦るし…将さんとの会話は噛み合わないし…フフフッ」
「え?そうだったかな?」
「そうですよ!
だから、訳も解らず、突然キスされて戸惑って…
将さんが何考えているのか、全然わからなくて不安で…」
そっか…そうだよね
あの時、あの強い感情と衝動の正体が、『好き』という感情のものだと知らず、気持ちを口に出せなかった。
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