甘い香り【Ⅰ】

31/34
前へ
/227ページ
次へ
-------- ------ 俺は、二次会の居酒屋に行っても、彼女のことばかり考えていた。 彼女のあどけない表情 色白の肌に赤く染まる頬 ふっくらとした艶やかな唇 細い手首 柔らかい耳たぶ ふわふわな髪の毛 そして、俺を惑わす甘い香り 彼女の姿に、あの感触に、あの香りに思いを馳せる。 俺はそれを邪魔されたくなくて、二次会で盛り上がる中、一人少し離れて呑んでいた。 すると、そんな俺に気付いて、智紀が話し掛けて来た。やはり彼女のことを尋ねてくる。 「お前、マジ、どしたの? 自分から動くなんて珍しくね?」 「そ?」 長年の付き合いの智紀には、彼女への俺の言動には、さぞ驚いたことだろう。 俺自身、驚いているんだから… 「お前がそんなに女に興味を抱くなんて…アイツ以来だろ? でも、ふーみんって、お前のタイプじゃないし。 ま、小動物系で可愛い感じだけど、普通っていうか…」 「フッ…そっかな。」 俺は苦笑いをしてごまかす。 普通…か 智紀には彼女はそう映るんだな よかった… 彼女の魅力をまだ誰も気付いていないかな? ちょっとだけ安堵する。 ・
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19384人が本棚に入れています
本棚に追加