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俺はいつもなら頼まない、甘い香りと味がする桂花陳酒を頼んだ。彼女の甘い香りを思い出したくて…
口に含むと甘い香りが、口内と鼻に広がる。
甘ッ……やっぱり全然違うな
当たり前か…
俺の頭の中は、いつまでも彼女に支配されている。
マジ…俺、どうかしてる…
しかし、いくら振り払おうとしても、彼女の姿が脳裏に浮かぶ。
真っ赤な目をした真っ白なうさぎ
「…皆が気がつかないうちに、獲物を捕らえなきゃね…クスッ」
俺はつい独り言を零した。
そう…
今なら、彼女のあの誘われるような甘い香りに、誰も気付いてはいない。
「文香…」
彼女の名前をそっと呟く。
それだけで、俺の胸が疼く。
早く明日になればいいのに…
何故、こんなにあの甘い香りに惑わされているのか知りたい。
この感情の正体を、この衝動の理由を知りたい。
文香に早く会いたい
俺は、この時はまだ、この答えを自覚していなかった。
答えは既に出ていたというのに…
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