甘い香り【Ⅰ】

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俺はいつもなら頼まない、甘い香りと味がする桂花陳酒を頼んだ。彼女の甘い香りを思い出したくて… 口に含むと甘い香りが、口内と鼻に広がる。 甘ッ……やっぱり全然違うな 当たり前か… 俺の頭の中は、いつまでも彼女に支配されている。 マジ…俺、どうかしてる… しかし、いくら振り払おうとしても、彼女の姿が脳裏に浮かぶ。 真っ赤な目をした真っ白なうさぎ 「…皆が気がつかないうちに、獲物を捕らえなきゃね…クスッ」 俺はつい独り言を零した。 そう… 今なら、彼女のあの誘われるような甘い香りに、誰も気付いてはいない。 「文香…」 彼女の名前をそっと呟く。 それだけで、俺の胸が疼く。 早く明日になればいいのに… 何故、こんなにあの甘い香りに惑わされているのか知りたい。 この感情の正体を、この衝動の理由を知りたい。 文香に早く会いたい 俺は、この時はまだ、この答えを自覚していなかった。 答えは既に出ていたというのに… ・
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