甘い香り【Ⅲ】

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合コン当日。 こんなに落ち着かない日は、初めてだ。 ま、ガキの頃から感情を出すのが苦手だったから、誰も気が付きはしないが……一人を除いては。 「将、朝からソワソワしてんな~」 「え!?どこが!? 全然わかんないんだけど」 智紀の指摘に、武ちゃんが驚く。 「シャーペン回しの数が異常だったし、前髪をやたらかき上げてるし」 それこそ今、前髪をかき上げようとしている俺の手をビシッと指差した智紀。 「チッ!」 「さすが!幼なじみ!」 「顔は無表情なのにな…ククッ」 舌打ちする俺を、武ちゃんと河島が冷やかしの目で見る。 「ほっとけよ!」 俺はふて腐れて、頬杖をついた。 仕方ないだろ! ホントに彼女が来てくれるのか、不安なんだから。 「そろそろ来ると思うんだけどな」 智紀が時計を見ながら、呟いた。 俺達は既に合コンをする居酒屋に到着し、案内された座敷の一角に、四人並んで着席していた。 掘りコタツ式の座席で、隣の座敷とパーテーションで仕切られている。 ・
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