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俺は彼女の手を握っている手に、わざと力を入れた。
「…文香、飲まないの?」
俺は狡い男だから、彼女に意地悪して、彼女の気持ちを確かめる。
俺の手の中には彼女の小さな手
「の、飲みますよ!」
彼女は俺の言葉を受けて、空いてる左手でグラスを持ち、飲み続けた。
振りほどこうとしない彼女の右手
「クスクス…俺も負けないように飲もうかな」
まだ俺の手の中にある彼女の小さな手
俺は小さな勝利を収めた気分で、ロックの焼酎を一口呑んだ。
彼女は、この手のように、このまま俺の気持ちを受け入れてくれるだろうか?
ほどかれない手は、俺に微かな希望を燈す。
それからずっと、俺は彼女の手を離さなかった。
文香が俺の傍から離れないように
微かな希望が消えてしまわないように
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