甘い香り【Ⅲ】

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俺は彼女の手を握っている手に、わざと力を入れた。 「…文香、飲まないの?」 俺は狡い男だから、彼女に意地悪して、彼女の気持ちを確かめる。 俺の手の中には彼女の小さな手 「の、飲みますよ!」 彼女は俺の言葉を受けて、空いてる左手でグラスを持ち、飲み続けた。 振りほどこうとしない彼女の右手 「クスクス…俺も負けないように飲もうかな」 まだ俺の手の中にある彼女の小さな手 俺は小さな勝利を収めた気分で、ロックの焼酎を一口呑んだ。 彼女は、この手のように、このまま俺の気持ちを受け入れてくれるだろうか? ほどかれない手は、俺に微かな希望を燈す。 それからずっと、俺は彼女の手を離さなかった。 文香が俺の傍から離れないように 微かな希望が消えてしまわないように ・
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