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「崎村さん」
自販機で水を買い、彼女の元へ行こうとしたら、橋本に呼び止められた。
「橋本?わざわざどした?」
「ちょっと言っときたいことがあって…」
引き返してまで?
「何?」
「あたし…
文香の許しなく、こんなこと言っていいのか迷ったけど…」
いつもサバサバと話す橋本が言い淀むなんて珍しい。
それだけ重要なことなのかもしれない。
俺はきちんと橋本に向き直る。
「あたしは、文香が過去の殻を破るためなら、崎村さんにこじ開けて貰ってもいいと思ってます」
文香の過去の殻…
彼女に何かトラウマがあるってことだろうか?
「ただ…文香を受け止めるつもりがないなら、手を出さないで。
文香を傷つけたら、許しませんから」
橋本が真剣な目で俺を見据える。
橋本は、過去の何かから、きっと今まで彼女を守ってきたのだろう
橋本の彼女に対する強い思いが伝わってくる。
「…肝に命じとくよ」
俺は慎重な面持ちで頷いた。
「じゃ、ホントに文香よろしく!
カラオケでガンガン歌ってきます!」
そう言って、さっきまでの真剣な雰囲気が一転、橋本は軽やかに去って行った。
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