甘い香り【Ⅲ】

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「崎村さん」 自販機で水を買い、彼女の元へ行こうとしたら、橋本に呼び止められた。 「橋本?わざわざどした?」 「ちょっと言っときたいことがあって…」 引き返してまで? 「何?」 「あたし… 文香の許しなく、こんなこと言っていいのか迷ったけど…」 いつもサバサバと話す橋本が言い淀むなんて珍しい。 それだけ重要なことなのかもしれない。 俺はきちんと橋本に向き直る。 「あたしは、文香が過去の殻を破るためなら、崎村さんにこじ開けて貰ってもいいと思ってます」 文香の過去の殻… 彼女に何かトラウマがあるってことだろうか? 「ただ…文香を受け止めるつもりがないなら、手を出さないで。 文香を傷つけたら、許しませんから」 橋本が真剣な目で俺を見据える。 橋本は、過去の何かから、きっと今まで彼女を守ってきたのだろう 橋本の彼女に対する強い思いが伝わってくる。 「…肝に命じとくよ」 俺は慎重な面持ちで頷いた。 「じゃ、ホントに文香よろしく! カラオケでガンガン歌ってきます!」 そう言って、さっきまでの真剣な雰囲気が一転、橋本は軽やかに去って行った。 ・
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