甘い香り【Ⅲ】

15/40
前へ
/227ページ
次へ
「ほら」 俺はもたげている彼女の頭の上に、水のペットボトルをちょこんと当てる。 すると、彼女は怠そうに顔を上げた。 「…すみません」 彼女は素直にペットボトルを受け取り、水を飲む。 「まだキツい?」 「…まだちょっとだけ」 「んじゃ、タクシー乗って帰るか」 「…もったいないですよ」 「こっから駅まで距離あるし、文香、動くの辛いでしょ?金なら心配しなくても大丈夫だから」 「すみません…」 彼女は小さな声で、俺に謝る。 彼女は、酔っ払っても涙目で顔が赤い。俺は彼女のこの顔に弱い。 ついでにトロンと気怠そうな表情も追加されて、これまた色っぽい。 俺、なんだか橋本と彼女に、試されている気分… 彼女を俺のものにしたいのなら、生半可な覚悟じゃ駄目だと釘を刺され… 目の前の彼女は、今すぐ襲ってしまいたいほど魅惑的だ。 俺のほうが大丈夫かな? ・
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19385人が本棚に入れています
本棚に追加