甘い香り【Ⅲ】

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「ほら、とりあえず大通りまでは我慢して歩いて。 そこで、タク捕まえるから」 「…はい」 俺は、彼女の手を掴んで起き上がらせ、一緒に歩き始めた。 彼女はちょっと覚束ない足どりで、俺に手を引かれて、フラフラと歩いている。 俺の手の中にある小さな手 彼女は、その手を振り解こうとはしない。 「大丈夫?」 「…大丈夫じゃ…ない…かも」 俺は振り返り、彼女の様子を伺うと、彼女がたどたどしく応える。 何かに怯えるような目をした彼女 「…俺のせいかな? そんなに酔っ払ったの」 「…そ…かも?」 小さく呟く彼女の小さな手を、俺はもう一度強く握る。 彼女をやっぱり離したくない 過去に何があろうと… 彼女の潤む眼差しを見ていたら、不意にそんな思いに駆られた。 すると、ちょうどタクシーがやって来ているのが見えた。 「あ!タクが来た!乗ろう」 偶然、通りかかったタクシーに二人で乗り込んだ。 ・
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