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「ほら、とりあえず大通りまでは我慢して歩いて。
そこで、タク捕まえるから」
「…はい」
俺は、彼女の手を掴んで起き上がらせ、一緒に歩き始めた。
彼女はちょっと覚束ない足どりで、俺に手を引かれて、フラフラと歩いている。
俺の手の中にある小さな手
彼女は、その手を振り解こうとはしない。
「大丈夫?」
「…大丈夫じゃ…ない…かも」
俺は振り返り、彼女の様子を伺うと、彼女がたどたどしく応える。
何かに怯えるような目をした彼女
「…俺のせいかな?
そんなに酔っ払ったの」
「…そ…かも?」
小さく呟く彼女の小さな手を、俺はもう一度強く握る。
彼女をやっぱり離したくない
過去に何があろうと…
彼女の潤む眼差しを見ていたら、不意にそんな思いに駆られた。
すると、ちょうどタクシーがやって来ているのが見えた。
「あ!タクが来た!乗ろう」
偶然、通りかかったタクシーに二人で乗り込んだ。
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