甘い香り【Ⅲ】

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「すみません。北南大学のほうへ。大学近くになったら、また道を説明します」 運転手にそう告げると、タクシーは発車した。 タクシーの中でも、俺は彼女の手を離すことはしなかった。 「文香、大学付近になったら、家の場所教えて。 それまで寝てていいよ」 「大丈夫です」 「クスッ…さっき大丈夫じゃないって言ったじゃん」 「そですね…フフッ」 彼女が柔らかい表情で笑ったから、俺もつられる。 「…崎村さんといると、ホント調子狂っちゃう」 「何?クレーム?」 「そ…ですよ。 もうあんまり…ビックリさせ…ない…で…」 彼女の声が途切れ途切れになるとともに、彼女の瞼が次第に重くなっていき、規則的な息遣いが聞こえてきた。 寝ちゃったな… 彼女は窓にもたれて、ぐっすりと寝ている。 こんな、もたれるのに調度良い肩が隣にあるっていうのにな… 俺は空いてる手で、彼女の頭をそっと動かし、俺の肩へ乗せた。 ・
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