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「文香、文香。もうすぐ着くよ。
文香、起きて」
彼女を揺すって起こしたが、全然起きない。起きる素振りさえ見せない。
そして、パン屋の前で停車してもらい、身体を揺すったり、軽く頬を叩いたりして何度も起こすが、全く起きる気配がない。
おいおい…どんだけ爆睡だよ
「お客さん…こりゃあ起きないよ。どうします?」
運転手もさすがに呆れ顔だ。
「はぁー…仕方ないな…
すみません。じゃ、右折して、バイパスの方へ出て下さい」
結局、文香を起こすのを諦め、俺の自宅へ向かうことにした。運転手に俺ん家までの道を伝える。
生き地獄が継続か
文香も酷なことを強いるよなぁ…
「お客さん、着きましたよ」
タクシーが俺ん家のマンションのエントランス前に停車し、俺は料金を支払った。
念のためもう一度、文香を起こすけど、やっぱり反応なし。
「はあぁぁーー…」
無意識に盛大な溜息が出る。
俺は意を決して、彼女を抱き抱えて、降車した。
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