甘い香り【Ⅲ】

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------- ----- シャワーから出て、テレビを見、本を読み、パソコンし、酒を飲む…と、一通り日常的なことをしたけれど 「どれも集中できないっつーの…」 やはり、堪えず気になる寝室の中のお姫様。 寝室からは物音ひとつ聞こえず、彼女が起きた気配もない。 俺は、彼女をベッドに寝かせて退室してから、一度も寝室へは入っていない。 あの甘い誘惑に打ち勝つ自信がないからだ。 「寝る前に、もう一度だけ様子見とくか」 俺はもちろんリビングのソファーで寝るつもりだ。 しかし、あれから全く彼女の様子を見ておらず、さすがに気にかかるので、寝る前に最終確認をすることにした。 俺の理性、なんとか頑張ってくれ 自分で自分に縋るなんて馬鹿すぎるが、今の俺にはそれほどまでに切羽詰まる状況だった。 文香が好きだというだけで、俺のすべてのベクトルが彼女へと向かってしまう。 自分のことなのに、自分ではないような、訳のわからない感情の高ぶりに翻弄されっぱなしだからだ。 ・
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