甘い香り【Ⅲ】

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俺が独り言を言っても、彼女は全く起きない。お陰で俺はじっくりと彼女の寝顔を見つめることが出来る。 この唇が魔物なんだよな… 唇フェチでもないんだけど、この唇にいつも惹かれてしまう。 あー…キスしたい… でも、キスしたら、絶対止められないだろうし。 俺は、魅惑的な彼女の唇を指でなぞった。 すると 「……ん…」 「ーッ!!」 彼女が小さい声を出し、のそりと寝返りを打ったので、ちょっと驚いた。 彼女は俺に背を向ける態勢になる 起きたかな…? 俺は立ち上がり、ベッドに手をついて、彼女の顔を覗き込んだ。 すると、またあの甘い香りが鼻を刺激する。 おっと…危ない… 一瞬、動揺して身を引いたが、改めて顔を覗き、規則的な寝息を確認する。 そして、俺は彼女の足から解かれた掛け布団を掛けようとした。 しかし、その手がピタッと止まる。 縮こまる彼女の寝姿に、不意に抱きつきたい衝動がまた起こる。 ちょっとだけ…ちょっとだけだ… 俺は心の中で言い聞かせながら、なるべく静かに横になった。 そして、後ろから彼女を抱きしめた。 ・
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