甘い香り【Ⅲ】

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「…あの…ここは?」 「俺ん家」 困ったような気まずい感じの彼女の表情。 突然のこの状況に、戸惑うのは仕方がないか… 俺は、彼女に家に来る羽目になったいきさつを簡単に説明した。 「…ご迷惑をおかけして、すみません」 小さい身体を更に縮こまらせて、真っ赤な顔して謝る彼女。 この顔見てたら、つい虐めたくなるんだよね 「ま、その分、俺もちょっと得したとこもあるから、気にしないでね」 「あの…得とは?」 「んー? まずは口半開きの文香の寝顔が見れたでしょ?」 「えぇ!?」 フフッ…ビックリしてる。ビックリしてる。 オタオタする可愛い彼女を見て、今更だが、好きな子に意地悪したくなるという心理を理解する。 「あと、ここまで運ぶために抱っこもできたし?」 「うそ!?抱っこって!?」 「起きないから仕方ないじゃん。だから、お姫様抱っこって奴?」 「ーッ!!……あ!」 彼女は俺の発言に動揺し、持っていたグラスの中の氷を、そこら中にぶちまけてしまった。 ・
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