甘い香り【Ⅲ】

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「…ねぇ、文香。 酒は?もう気持ち悪くない?」 「そーですね。少し寝たから、だいぶん楽になりました!」 「…そっか」 無邪気な笑顔で、拾った氷をグラスの中へ入れる彼女。 彼女はきっと、今の質問の真意を勘違いしている。 俺は、なんて狡いんだろう… 今の質問は、彼女の体調の心配をしたからじゃない。 彼女が酔っ払っていないか、意識が正常ではっきりしてるかを確認したんだ。俺のために… 俺はグラスに手をかけている彼女の手に自分の右手を重ねた。 「崎村さん?」 彼女は突然、俺に手を掴まれて、首を傾げて俺のほうを振り返る。 上目遣いで見上げる彼女。 その首筋に一滴の水が、首から鎖骨へ、そして、服の中へと滑り落ちていった。 もうダメだ… 俺の左手の中には、最後に残っていた氷が一つ。 ・
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