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「…ねぇ、文香。
酒は?もう気持ち悪くない?」
「そーですね。少し寝たから、だいぶん楽になりました!」
「…そっか」
無邪気な笑顔で、拾った氷をグラスの中へ入れる彼女。
彼女はきっと、今の質問の真意を勘違いしている。
俺は、なんて狡いんだろう…
今の質問は、彼女の体調の心配をしたからじゃない。
彼女が酔っ払っていないか、意識が正常ではっきりしてるかを確認したんだ。俺のために…
俺はグラスに手をかけている彼女の手に自分の右手を重ねた。
「崎村さん?」
彼女は突然、俺に手を掴まれて、首を傾げて俺のほうを振り返る。
上目遣いで見上げる彼女。
その首筋に一滴の水が、首から鎖骨へ、そして、服の中へと滑り落ちていった。
もうダメだ…
俺の左手の中には、最後に残っていた氷が一つ。
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