甘い香り【Ⅲ】

32/40
前へ
/227ページ
次へ
口の中の氷がほぼ溶けたと同時に、俺はゆっくりと彼女の唇を解放する。 すると、彼女の口の端から、氷の溶けた水が一筋零れる。 「あ…」 彼女の甘い声とともに、首筋にもその一筋が描かれる。 彼女は俯き加減で、自分に滴る水の行方を目で追い、手を添えた。 その瞬間、彼女の柔らかい髪がハラリと前に落ち、首筋からうなじがあらわになった。 すべての彼女の仕草に、俺は欲情する。 どんだけ、俺を煽る気なの? 「ほら…やっぱりエロい…」 「あッ…ダ…メッ……」 俺は、誘われるように、彼女の首筋から耳へ舌を這わせた。 無理だ…もう止められない 俺は文香の頭を両手で掴み、激しいキスの雨を降らす。 抑制が効かなくなった自分の欲望に、身体が忠実に動いた。 彼女は息も絶え絶えに、悩ましい吐息を漏らし、次第に身体の力が抜けていく。 俺の荒く攻めるようなキスの応酬に、彼女は押されるようにベッドへと倒れ込んだ。 ・
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19385人が本棚に入れています
本棚に追加