甘い香り【Ⅲ】

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俺は彼女を逃がさないように、彼女の上に跨がった。 彼女の手を握ると震えている。 俺のことが怖いかな… 彼女は、まだ肩で息をして、潤む眼差しで俺を見つめている。 怖いよな… だけど…もう…止まらないんだ 「目の前の獲物は逃さないって言ったよね?」 「…ハァッ……でも…酔っ払いは…襲わないって…」 「だから、酔いが覚めたか聞いたでしょ?」 「…酔いが覚めたとは…言ってない…です」 「そ…だったかな?…」 そうだったかもしれない。 だけど、彼女の意志がはっきりさえしていればいい。 酔ってて覚えていない…なんてことがないように。 俺の気持ちが、俺の存在が 彼女の中に刻み込まれるために 不安げな瞳で、震えている彼女 そんな怯える彼女の姿に余計に欲情するなんて、俺は最低だ。 彼女の鎖骨はまだ濡れていた。 俺は、流れ落ちた水と同じ、彼女の首筋から鎖骨を指でなぞる。 「あッ!やッ!」 彼女がビックリして、咄嗟に俺の手を震える手で掴む。 こんなに震えて……ごめん ・
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