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俺は彼女の手を握り返し、彼女が少しでも怖がらないように、顔中に優しく何度もキスをした。
「…怖い?」
俺が小さい声で尋ねると、彼女はゆっくりと頷いた。
怖がらせて…ごめん
俺の気持ちばかり押し付けて…
文香の気持ちも無視して…
だけど…
どうしようもなく、
お前を俺のものにしたい
だけど…
「今なら…」
「今…なら?」
「今なら、引き返せる…」
そう…今ならきっと、引き返せる
今更ながら、智紀と橋本の言葉が頭を過ぎる。
『送りオオカミになるなよ~!』
『文香を受け止めるつもりがないなら、手を出さないで』
アイツらは、解っていたんだ。
俺の気持ちが止まらなくなるのを
だから、釘を刺したんだ。
俺がギリギリで踏み留まるように
彼女を無理強いしないように
文香…今なら引き返せる
お前が俺を拒否すれば…
「…初め…てで…どうしたら…いいか…わから…ない…」
「文香…」
駄目だよ、文香
そんなこと言えば、俺はお前の初めてを自分のものにしたくて、堪らなくなる。
迷わないで、文香。
俺に委ねれば、答えは出てしまっているんだから…
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