甘い香り【Ⅲ】

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「さき…む…ふッ…うッ…」 文香の瞳から、次から次に涙が溢れ出す。 「クスッ…だから名前で」 「フッ…ウッ…グスッ……将さん!!」 「うさぎから飛び込んできた…フフッ」 ポロポロと泣きながら、自分から、抱き着いてきた文香。 狡い俺は、文香の心を掴むために橋本の言葉を借りたけれど 我が儘な俺は、お人よしな文香に強引に付け込んだけれど 文香が誰よりも好きだから 文香のすべてを受け止めたい 俺は大切な宝物を慈しむように、文香にその気持ちを込めて、キスをした。 すると、文香が俺の頬にそっと手を添え、潤んだ瞳で優しく微笑みながら、思いがけない言葉を放った。 「オオカミさん…召し上がれ」 「ーーッ!!」 まさか、こんな綺麗な笑顔と洒落た台詞で、俺を受け止めてくれるなんて… どれだけ俺を翻弄するんだろう 「はぁぁ…俺、もう余裕ないや。 壊しちゃったら、ごめん」 俺は再び、文香の身体に覆いかぶさる。 ・
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