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そしていつまでもはっきりしない透子の手を取り立たせると、有無をいわさず歩き出した。
「この近くの鈴華(すずはな)でいい?」
「えっ!」
透子は彼の横顔を見上げ、
「ダメよ!」
思わず声を上げた。彼は驚いたように透子の顔を見る。
鈴華といえば懐石料理の老舗で、よくテレビや雑誌に取り上げられるほど有名な店だ。
いくらお詫びのご馳走とはいえ、明らかに自分より年齢の若い青年に連れてもらう義理はない。
「……あっ…違うの、私行きたい喫茶店があるんだけど。」
気まずくなる空気を繕うように透子自ら提案した。
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