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宵闇の中に金糸の紅い毬が跳ねる。毬をつくのは幼い少女だ。白粉をはいたかのよいな白い顔に黒々としたおかっぱ。少女にしては渋い黒地に紅い花を散らした着物だが少女の妖艶さをかもしだしている。 「てんてん手鞠。星は廻る。星は巡って巡って回る。空が映すのは光と闇の子守唄。」 少女から童歌が紡がれる。その歌声は軽やかでどこか楽しそうでもある。 あ、という声がもれた。 毬が少女の手から離れ薄闇の中へと転がってゆく。 少女は追いかけるまでもなく、ぽつりと呟いた。 「東から凶事がやってきはる。」
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