第十二章 目的

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昼になったので、訓練をしていた勇国兵たちは食堂へと引き上げていく。 その頃、勇者たちはというと、団長室にたむろっていた。 「誰かさんのちょっとイラッ☆とする言葉が聞こえたから~、『そうだ、中佐 殺ろう☆』ってなって~、転移魔法で来たのよ~」 「その『☆』は何!? 殺伐とした言葉を無理に明るい感じにしようとしてない!?」 ソファーに向かい合って座る勇者と僧侶を、自分の机から怨めしそうな視線を送っている中佐。 「というよりもぉ、あく……じゃなくて僧侶、耳良すぎじゃねぇか!? ここと聖都じゃ随分と距離あんだろ」 「風が教えてくれたの~。風の噂ってすごいのよ~」 「ただの風の噂だけで、大量の魔力を消費する転移魔法を使って来るなんてどうかしてるぜぇ……」 中佐が溜め息をついた時、ドアがノックと共に武闘家が入ってきた。 「中佐、メシだ……ね、姐さん!? なぜここに!?」 「あら~? いちゃいけないのかしら~」 「いや、とんでもない!! それよりも、中佐に昼食を運んでくれと料理長に頼まれてな」 ペコペコと僧侶に頭を下げながらも、自分が持ってきた台車を部屋に入れる。 大きめの台車の上には、銀のボウルが被せてあり、その下に料理があることがわかる。 「これが今日の昼食かぁ?いつもはこんなボウル被ってねぇぞぉ?」 「なんでも、料理長曰く、『変わったものが食べたいと言ってたらしいので、うちのエースに本気を出させてみました(笑)』だそうだ」 「なんだ!? 『(笑)』って!! それにしても、調理科の本気ねぇ……」 そう言って、中佐は銀のボウルを持ち上げる。 「なんだ……これは?」 料理を眺めた中佐の一言目の感想がこれなので、どうせただの定食だろうと料理など気にもしてなかった勇者と僧侶も気になって覗き込む。 「うわっ……」 「確かに……変わってるわね~……」 眉をひそめる二人。三人とも沈黙してしまったため、武闘家はポケットから紙を取り出した。 「そうそう。一応、料理長からメニューを預かってあるのでな、読むぞ?」 「なんとなく予想はつくがぁ……そうしてくれ」 中佐が武闘家を促した。
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