第一章 回想

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「なぁ僧侶、何探してんの?」 すると僧侶さんの後方から男の声がした。 あれ? 僧侶さんのすぐ近くに別の男がいたなんて全然気がつかなかったな。見ると男の靴が視界に入る。あれは旅人の靴か。 視線を上に上げる。旅人の服を着ていて左腰には剣を差し、右手には剣と同じ位の長さで銀に光る杖……。 あれ? 杖? 僧侶さんが探しているのも杖じゃなかったっけ? てかあの杖だろ絶対。めっちゃ僧侶職の杖ですって感じするもん。ただポケットには入りそうもないんだが……。 だがそんな思考もすぐに途切れてしまった。 なぜか。視線をただ上にもっていっただけさ。俺と同世代位の若い顔。しかし、両頬に切り傷。そこから垂れる血。 だが驚いたのはそれだけじゃない。 ……残念過ぎるモミアゲww ヤベェ、笑いが止まらねぇわ。 「あぁ勇者クン、居たの。」 僧侶さんが今何か言った。 このモミアゲが残念過ぎる男が勇者!? マジかよ、全然勇者オーラねぇよ。てか存在感もねぇわ!! ヤベェ、俺の中の勇者のイメージが崩壊したわ。 [俺の中のイメージの変化] イメージしてた勇者 ・聖剣 ・聖防具 ・端正な顔 ・なんか神々しい ↓ 実際の勇者 ・普通の剣 ・旅人の服・残念過ぎるモミアゲ ・薄い存在感 1人落胆する俺。同じく落胆する勇者。 「ちょ、酷いよ僧侶。僕ずっとここにいたよ!?」 勇者はずっとここにいたらしいです。うん、勇者マジで存在感ねぇわ。 「で、さっきから何探してんのさ?」 「ん~? 何って、この人、酷いケガ負ってるみたいだから回復してあげなきゃいけないじゃな~い」 「え? 自分で負わせておいて何言ってんだよ」 …………んん?
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