第十二章 目的

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この面接官の目はいったいどうなってやがる!! …………いや、もしかして、俺をイジって激昂させるのが狙いか!? 面接って怖ぇ。 面接官に対してあくまで冷静に、そして和やかな表情を貫く俺。面接なんかに負けるわけにはいかない!! 「あの……」 面接官が黙ってしまったので、とりあえず声をかけてみた。すると、 「私は戦士さんを探しに行くという用事ができたので、そろそろ面接はおしまいにしましょうか」 と面接官が立ち上がった。 俺はここにいるのに、どこに探しに行く気だ? もしかして、俺は耐えきったのか? 企業面接という名の試験を。 「終わり、ですか……?」 「はい。…………ん? なんです? その兜は」 面接官は俺の膝の上の兜を凝視し始めた。今さら気付いたのか? 「聖国での最終決戦前まで使ってた兜ですよ」 面接官に兜を差し出す。 「これはよくできてる……というか本物の戦士さんの兜か!? なんでこんなものを持ってるんだ?」 「いや、だから私が勇者一行の戦士なんですって」 眉を寄せる面接官から兜を受け取る。 「ちゃんと見ていて下さいよ? 私が戦士だってわかりますから」 俺は再び兜を被る。 「そんなわけない…………ホンマや!! あなた、本当に戦士さんだったんですか!! 今までのご無礼、本当に失礼しました!!」 え、本当に俺のこと戦士だと思ってなかったの!? てっきりそういう演技で俺を混乱させるものだと……。 「いやいや、そんな畏まらないで下さい」 「いえいえ、そんなわけには。えっと、ウチへの就職が希望なんですよね? ドッキリとかじゃないですよね?」 「もちろん。本気でここで働きたいと思ってます」 「なら是非ともウチに来て下さい!! 戦士さんなら即採用ですよ!! むしろ、ウチなんかでいいんですか!?」 「ここが一番いいかなって」 「本当ですか!? ありがとうございます!! 是非明日から来て下さい!!」 やった!! 仕事決まったよ!! 俺が戦士だってわかってからっていうのが悲しいけども!! 「あ、そうだ。一つだけ、質問しても宜しいですか?」 「なんですか?」 興奮のさめない面接官は思い出したように俺に問うた。 「誰か、付き合ってる方とかいます?」 「はい、いますけど?」 「やっぱ不採用!! なんだリア充か。このお話はなかったということで」 「ハァッ!?」 久々に叫んじゃったわ。口からありったけの驚きプラス怒りの声が出たわ。
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