第十二章 目的

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「面接官さん、ちょっと意味わかんないですけど」 「そのまんまの意味ですよ。他をあたって下さい」 「その理由は聞けないんですか?」 「強いていうなら、ウチの職場にリア充はこれ以上いらないってことですかね」 どういうこと!? 採用と言って持ち上げといて、すぐさま不採用って言葉で突き落とされて、不採用の理由がリア充!? 「ちょっ、そりゃないですよ」 「いや、だってさぁ、周りはどんどん結婚していくんですよ? 生涯独りかなぁって思ってた最年長のハゲも結婚しちゃったし。俺だけ寂しいじゃないですか!!」 面接官の寂しいって気持ちで俺落とされちゃうの!? そんなこと面接の指南書には書いてなかったよ!! 「そんなことないですって。独りの方が色々できることがあるって武闘家が言ってましたし」 「あの人の場合強がりで言ってるんじゃないですか?」 「そうかなぁ。俺もくっ付いてから縛られること多くなったなって感じることあるんですよ。「浮気したら何かを滅ぼす」って脅されたり、バナナ好きの集いに行ってくるって出掛けようとしたら、「やっぱりバナナに浮気するのね!?」って隣の家の牛舎が吹っ飛んだりと大変なんですよ」 「もしかして、戦士さんは悪魔……いえ、僧侶さんとお付き合いなされてる!?」 「それはないです!!」 もしそうなら、俺はこの世界にいない気がする。 「そう言えば、ここに来る時も「早く帰ってきてね? じゃないとあの家が吹っ飛ぶかもしれないわ」って隣の家を指差して言われたんですよ」 「隣の家、災難過ぎるでしょ!!」 「大変なんですよ。牛舎を吹っ飛ばした時も、色んな魔物に協力してもらって、なんとか謎の局所的な竜巻の発生のせいで吹っ飛んだことにしたんですから」 「隠蔽しちゃったんですね!?」 ツッコむ面接官。 隠蔽? 何のことやら……。 「だからね、付き合ってるからと言って薔薇色ってわけじゃないんですよ。やっぱ独り身には独り身の良いところがあるんです。 だからね、不採用ってのはよくないと……」 「いや、そこは不採用で」 この流れで考えを変えないだと!? 「そこをなんとか……!!」 「いくら戦士さんでもごめんなさい」 なんて強情な!! くっ、仕方ない。最後の手段を使うか!! 「……私、この面接に落とされたら、他の面接を受けないといけないですよね?」 「そうなりますね」 頷く面接官。 「そうなると私の帰りが遅くなるわけですよね」
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