第十二章 目的

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「ま、いいです、スルーしときます……。 さて、これからのことですが、とりあえず明日もここに来て下さい。仕事の内容は明日決めましょう」 「明日……?」 「はい」 頷く面接官。 明日か……。それはちょっと厳しいな。 「明後日ではダメですか?」 「明後日? 明日は用事でもあるんですか?」 首を傾げる面接官に対して、俺は申し訳なさそうに告げる。 「これからマヒャドに帰るんじゃ、家に着くのは明日の夕方になりそうなので……」 「マヒャド? えっ? 戦士さん、わざわざ英国マヒャドからいらしたんですか?」 「はい。マヒャドじゃ良いバナナにありつくのが難しいので」 「第一要因はバナナなんだ!? リアルにバナナガチ勢だったんですね!! 初めて知りました!!」 そんなに珍しいかな、バナナ大好きって。 「やっぱ勇国はバナナの産地が近いからいいですよ。どこの店行ってもバナナが置いてあるし……」 「長くなりそうなので結構です」 遮られた!? バナナ語らせてくれよ!! 「勇国と英国を往復なんて大変ですね……。では、明後日の正午にこちらまで訪ねて頂いて……」 「正午、ですか……」 「明後日の正午、ダメですか?」 面接官はその瞳を俺に向けてくるが、俺は「大丈夫です」とも言えず、 「厳しいですね。最速でも、ここに着くのは明後日の真夜中ですね」 と現実を告げる。 「真夜中!? さすがに真夜中に私はここにいませんよ!! なら、四日後の正午にしておきましょう。明明後日(しあさって)を空けて四日後なら大丈夫ですね?」 面接官は困った顔をしながらも提案してくれた。 それなら大丈夫だろう。 「大丈夫です。ありがとうございます」 俺は頭を下げて礼を言う。 「もし、お隣さん家に何かあっても私の名前は出さないで下さいよ?」 「もちろんです。勇者に誓って言いません」 面接官は「“勇者に誓って”かぁ、心配だなぁ」と呟き、 「じゃあ、その予定でいきましょう。何か、この仕事をする上で、得意なものとかありますか?」 と質問してきた。 まだ質問があったか。この仕事で得意なこと、ねぇ。 「バナナは任せて下さい。あとは、斬ったり、干したり、焼いたりもいけます」 「『バナナだけは期待』と」 面接官、バナナ“だけ”ってなんだ!! そんなことメモすんなよ!! 「それじゃ、採用の方向でいきますね。では四日後お会いしましょう。お疲れ様でした」 「あ、俺がいるってことは秘密にしてくれませんか?」 「そう言うのであれば……」
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