第十二章 目的

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◆◆◆ 【ベギラマ城】 勇国の中心地。 城の中の一室。テレビからは女性アナウンサーが笑顔でニュースを読んでいる声が部屋に流れている。 『では、今日の占いです。 ……………………最後に、泊まり明けの仕事キツいと嘆き、かわいそうな部下に愚痴を聞かせるだけ聞かせたかと思いきや、暇だと自室の机に足を投げ出し背もたれに寄りかかって寝ているそこのアナタ。 “口は災いの元”という言葉が骨身に染みることでしょう。以上、本日の占いでした。良き地獄を~。バイバ~イ』 「俺かぁ!?」 笑顔で手を振る画面越しの女性アナウンサーに問い質そうとする男。 いきなり起き上がったので、身を預けていたキャスター付きの椅子は後方へと転がる。それを止めようとする足は机の上にあるため、尻から床へと落下した。 「あだっ!!」 彼は痛みに尻をさすりながら立ち上がると、番組の終わってしまっていたテレビを眺めた。 「なんて悪意のある番組だぁ……。『良き地獄を』なんて笑顔で言うことじゃねぇよ、例の悪魔じゃあるまいしなぁ」 ブツブツと呟いていると、この部屋の扉が開く。 「団長、お忙しいところ失礼します。朝食の準備が整いましたので、食堂までいらして下さい」 鎧姿の若い勇国兵。アナウンサーの言っていたかわいそうな部下とは、この彼だったりする。 「食堂? いつものように、ここまで食事持ってきてくれるんじゃねぇのかぁ?」 団長と呼ばれた男──つまり、モブたちが言うとこの中佐は怪訝そうな顔を向けた。 「今日は団長もいらして下さいとのことです。泊まり明けでまだ眠たいでしょうが、食堂までお急ぎ下さい。起床して腹を空かせた皆が待ってますから」 「……わかったぁ。すぐ支度する」 「では、失礼します」 若い兵士は敬礼すると、この部屋──団長室をあとにした。 普段の泊まり明けの勤務の場合は、宿舎で起床した後、そのまま団長室にいれば食事が勝手に用意されていた中佐だが、今日はどうやら違うらしい。 面倒臭いと呟きながら、いい香りのする食堂へと足を運んだ。
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