第十二章 目的

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「なんだぁ、武闘家もいたのかぁ」 「俺はいつも朝は食堂だぞ? なんせ、安いのでな」 中佐は、背が低いために椅子にマイクッションを敷いて座っている武闘家を見つけ、その隣に座った。 「団長、こちらが朝食です」 「わりぃなぁ」 先程の兵士が中佐の前に朝食を置くと、敬礼して自分の席へと去っていった。 「食事くらい自分で取りに行ったらどうだ? カウンターで受け取るだけではないか」 「いいじゃねぇかぁ、面倒臭いし」 武闘家が咎めるも、中佐は気にも留めずに朝食を眺めていた。 今日の朝食はパンと野菜スープ。それとバナナ。 「では、団長もいらしたので、いただきます」 「「いただきます!!」」 一人の合図で、兵士たちは一斉に朝食を食べ始めた。中佐に待たされていたので、皆腹ペコだった。 「普段ならそれぞれが勝手に食べ始めるのだが、今日は違って、皆中佐を待っていたのだぞ? 中佐、何かしたのか?」 「俺ぇ? 何もしてねぇぞ?」 「そうか、いつもと違うのでな。違うと言えば、普段出ないバナナが一本付いてきたな」 「バナナねぇ。確かに、バナナ丸ごと出るなんて始めてかもしれねぇ。マンネリ化した朝食を変えようって魂胆なのかもしれねぇけど、もっと、うんと変わったものが食いてぇなぁ」 わざとらしく、不味そうな顔でパンを頬張る中佐。 「何を言うか。この値段で腹一杯になれるのならば十分ではないか。食べ物に文句を言ってはならぬぞ」 「へいへい。お前も悪魔みたいなこと言うか。 そういやぁ、あの悪魔オバサンうるさかったなぁ。創作料理と称して、見たことない食材ばっか使った謎の銀色のスープを、正にお前と同じこと言って食わせてきたよなぁ。銀色って何だよ。どうすりゃあぁなるんだろなぁ」 自分で言って食欲が失せながらもスープをすすう中佐。武闘家は眉を寄せてそれを見ていた。 「ごちそうさん」 全て食べ終わると、中佐は食堂を出て団長室へ向かう。この後は騎士団の訓練がある。 武闘家と別れ、団長室で鎧を装備し槍を片手に取ると、そのまま中庭に向かった。 「あれぇ? 勇者じゃねぇかぁ。どうかしたかぁ?」 中佐が兵士たちの訓練を指導していると、城門をくぐってやってきた見知った顔を見掛けた。 声を掛けられた勇者はそれに気付き、中佐に接近する。 「中佐!!」 「どうしたぁ?」 「実はさ、モブ程じゃないんだけど、僕も第六感には自信があるんだけどね? 何か悪い予感がするんだよ……」
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