第十二章 目的

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「悪い予感だぁ? どうせまた、お前と姫さんとの縁談とかじゃねぇのかぁ?」 「違うんだよ!! そんなんじゃなくて、もっとこう、得体の知れない悪い感じなんだよ。そう、例えば僧侶の怒りに触れた時みたいな」 体全体を使ってゾクゾクっとするような動作をする勇者。中佐は顔をしかめるだけ。 「悪魔の怒りねぇ……。俺ぁ、悪魔に何かした記憶がねぇからそりゃあねぇな」 黒い笑いの僧侶の顔と、僧侶がしてきた数々の行いが中佐の頭の中を流れる。 「いや、でもね。僧侶関連じゃないにしても、何かヤバイ感じなんだって!!」 「そういうの信じねぇんだ、俺。占いとかもクソ喰らえだなぁ。信じさせたいなら、当たるところを見せてみろってんだぁ」 ヒュゴッ。 刹那、真剣に訴える勇者を笑顔で言いくるめようとする中佐の顔面すれすれを一本の矢が掠めた。 顔が蒼くなる勇者と、時間が止まる中佐。 「すいませーん、ボウガンが謎の暴発を起こしてしまって。お怪我ありませんか!?」 訓練中の兵士の群れから駆け寄ってくる兵士。 「なんとか大丈夫だけど……ね? 中佐?」 「こ、これからは気を付けるようになぁ……」 中佐は若干動揺しながらも、軽く注意するだけで兵士を帰す。 「ま、まぐれだよなぁ、勇者? たまたま矢が飛んできただけ……ッ!?」 ドゴーン。 口だけは笑おうとしていた中佐の元に、赤い大きなものが落下。 間一髪で中佐はそれを避けたが、その膝はカクカクと震えているように見える。 「す、すいません!! 飛竜が急に苦しみ出して!! お二人とも、お怪我ありませんか!?」 赤い飛竜から降りる兵士は、蒼い顔の勇者と乾いた笑みを浮かべるのが精一杯の中佐に頭を下げた。 「ちゅ、中佐……。これってヤバイんじゃないかな……?」 「いや、俺ぁ大丈夫だぁ……。それよりもお前、腕が変な方向ひ曲がっちまってるぞ。おーい衛生兵を呼べ!! 至急、飛竜乗りと飛竜の手当てを!!」 程なくして、飛竜乗りは担架で運ばれ、飛竜の元には獣医が集まった。 「こんな偶然あると思う!? 勇国を代表する飛竜部隊だよ!? 徹底管理されてる飛竜がそんな簡単に落ちるとか思えないよ!!」 「いやいやぁ、飛竜だって生き物だぁ。たまには調子悪い時もあるさぁ。そう、たまたまなん……ッ!?」 ズドーン。 「すいません!! 急に魔法教官の魔力が暴走してしまって!! 大丈夫でしたか!?」 「教官!? それってプロでしょ!? やっぱマズイよ、中佐!!」 「…………」
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